令和2年0520地方創生特委

 

地方創生特委質問趣旨

山川百合子

まえがき

「地方自治は民主主義の学校である」とは、フランスの政治思想家アレクシ・ド・トクヴィルの言葉です。国や地方を統治する王や諸侯からブルジョア革命によってブルジョワジーが、そしてプロレタリア革命によってブルジョアジーからプロレタリアにヘゲモニーが移行していく中で、土地や生産手段を持たない対多数の民衆が政治を動かすデモクラシーが始まりました。

その歴史的な転換期に、アメリカ合衆国が英国から独立しました。そのアメリカ合衆国の成り立ちがまさに、移民による開拓が広がっていく歴史的なプロセスの中で、まず地方自治が行われ、連邦制に発展していきました。

欧米のデモクラシーはまさに民衆のボトムアップの自治の力によって今日まで発展してきました。冒頭の「地方自治は民主主義の学校である」という言説は、トクヴィルが彼の著書『アメリカのデモクラシー』の中に記したものです。

この世界のデモクラシーの発展論と日本の民主主義は大きく異なる歴史的な変遷を辿ってきました。明治維新から戦時期までの我が国の地方制度は、衆議院調査局地方創生に関する特別調査室がまとめたとおり、「自治」と呼べるものではなく、「府県知事は国の官吏であり、また、府県の事務の大部分は知事に執行委任された国政事務であった」(調査書p.11)

今回の第10次地方分権一括法案の中身について縷々お伺いをしてまいりますが、そもそも地方自治が1947年5月3日に施行された日本国憲法に初めて規定されて今月で72年の月日が経過しました。日本の地方制度が欧米並みに「地方自治は民主主義の学校」だと言える状況に発展していくことを、地方議員出身の国会議員として強く念願していることから、「自治」に不可欠な「権限」と「財源」の状況がどうなっているのかという問題意識を基盤に伺います。

1.「権限」について~日本国憲法第八章地方自治と第94条について

  〇法にある「法律の範囲内で条例を制定することができる。」という規定 をどのように読み取ることができるのか。地域の特性に合わせた独自の条例制定は根拠となる「法律」が存在しない場合も可能か。

   地方自治の概念は、日本においては日本国憲法の第八章の章立てをもって初めて規定されたものです。戦前の地方制度は国の官吏である知事が執行委任された国政事務を処理するものであり、「自治」ではありませんでした。

   戦後、日本国憲法に規定された「地方自治」も欧米社会で言われるような「民主主義の学校」と呼ばれるようなものではなく、「自治の精神」よりも「自治の制度」が先行して我が国の統治機構の中に組み入れられたために、制度はあっても、「中央集権」制度の下請け業務的な色彩が今でも色濃くのこっており、指摘した憲法第94条の規定はそれを法文化したものであると感じられる。

   地方自治の精神が根付き、地方のことは地方で決定するプロセスが確立していくことが本来、「地方創生」の意義であると思うが、この憲法の規定が「自治の可能性」を狭める根拠になっているものと危惧されます。

   必ずしも、国の法整備が実現していない分野の制度や行政サービスも地方の特質や特性を生かして導入されていくためには、「自治権」の拡大は喫緊の課題だと考えます。

   「法律の範囲で条例を制定することができる」というのは、「法律が定めない」もしくは「根拠法のない」条例は制定できないと解することが妥当であるとするならば、「地方創生」の意義に逆行する「地方自治」に対する憲法の規定となる可能性があります。

   北村大臣および政府参考人のご見解をお聞かせ下さい。

2.「財源」について~三割自治から五割自治へ向けた税源配分について

  〇自治体の財政権の強化を求めた第4次勧告について

  〇地方消費税の清算基準の見直しと地方法人税の偏在是正について

  〇コロナウイルス感染症対策における自治体独自の対策の可能性について

さて、第10次地方分権一括法に至るまで日本の地方自治の拡大を企図し   て様々な改革が行われてきました。いわゆる三位一体の改革と呼ばれた「国庫補助負担金の廃止・縮減」、「税財源の移譲」、「地方交付税の一体的な見直し」という議論の中で、地方自治体は「税財源の移譲」による地方財源の確保に大きく期待していました。

かつては3割自治と呼ばれた日本の地方自治をせめて予算の多くが実際に執行される自治体の自主財源化を実現していくことで、せめて5割自治と呼べる規模に国と地方の役割分担と税源配分を目指そうという地方からの声が我が国の地方創生施策を後押ししていた時期があります。

現実には3割自治が4割自治と呼ばれる改革途上で、このような地方に弾力的な政策決定と財政運営を可能にすべく国と地方の税源配分の議論が収束してしまった観があります。

地方財源の偏在格差をどのように是正するかという議論も大事ですが、そもそも地方に必要十分な税源が未だ確保されていないことが問題です。

今回の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を決定して頂いたことは地方財源の現実的な問題を解決する政策としてはとても重要なものであり、この交付金を利用して実施できる施策メニューの提示までして頂けることは、地方自治体が再度、「自治」に目覚める好機となることが期待されます。

5割自治が達成されていて、十分な地方財源が確保されていれば、今回のようなパンデミックに際しても、地方自治体がそれぞれ独自に地域の実情に叶った弾力的な行財政運営が出来たはずでしたが、あらためてこの問題を政治問題化して議論するためにも好機になるのではないかと期待します。

北川大臣及び政府参考人にお伺いします。国と地方の税源配分の問題をどのようにご認識されておられるでしょうか。また、示された施策リストから必要な施策を選択し、実行するといった政策主導の積み上げ方式によって需要が喚起される今回の臨時交付金は、1兆円規模ではすぐに足りなくなることが予想されます。このことをどのように認識しておられるでしょうか。また、是非、そのような場合には臨時交付金の増額を政府内で強く働きかけて頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

3.都道府県から指定都市への事務・権限の意向(軌道法)について

  〇交通不便地域解消等に資する指定都市以外でのLRTの可能性について

  〇法の適用を拡大することについて

今回の軌道法の改正案は、既に道路管理者である指定都市に軌道交通の管理も委ねるという趣旨であると思います。

しかし地方自治体の交通不便地域の解消策や市域中心部への流入交通量の緩和策として注目されているLRTについては、さらに抜本的な財政支援を含めた支援策が重要であると考えます。

欧米に比べ、日本ではLRTの普及が進んでいません。既存道路を活用した高齢社会においても利用者に優しく、他の鉄道事業とは比べ物にならないほど建設コストが安価なLRTの普及は日本の都市交通の未来に大きな期待を与える施策であると思います。

LRT運行事業者に対する支援を行うことなどを通じて、その推進を図るべきであると考えますが、政府参考人のご見解をお伺いします。

4.地方議会議員選挙の立候補の届け出に添付する誓約書の制約内容に「当該選挙の期日において住所要件を満たす者であると見込まれること」を追記(公職選挙法)について

  〇「住所要件を満たす」基準と確認方法について

  〇住民票記載住所と候補者となろうとする者の生活実態の整合性について

公職選挙法が規定する「住所要件」については、これまでもしばしば問題が指摘されてきました。私の地元・埼玉県でも過去に新座市で当選した市議会議員が住民票は新座市内にあったものの、生活実態が無かったことを理由として当選が無効になったり、草加市では市内での生活実態があったものの選挙立候補時に登録した住民票の住所に居住実態がないことを理由に辞職勧告が成立し、これに対する当該議員の不服申し立てを埼玉県が認めて辞職勧告の実効性が差し戻されたりする事件がありました。

このことから分かるのは、住民票があっても生活実態が無ければ当選が無効となり、住民票の住所に居住していなくても当該市町村に居住実態があれば議員としての身分が保全されるという現実です。

本来であれば、住民票があり、居住実態もあることが公職選挙法の「住所要件」の趣旨ではないかと私も考えたわけですが、どうやら住民票の有無は必ずしも公職選挙法上の「住所要件」ではなく、ただ生活実態のみが当該自治体に存することのみが要件であると今回の法改正は読み取れます。

これは例えば、当該自治体内における住所は不定だけれども、当該自治体に確実に居住実態のある例えばホームレスのような方にも被選挙権が認められるのかどうであるのか。禁治産者には選挙権は認められませんが、選挙権や被選挙権の有無の確認方法はどのように考えておられるのか政府参考人のご見解をお伺いします。

5.試験研究を行う地方独立行政法人が、成果活用事業者等への出資等を行うことを可能に(地方独立行政法人法)

  〇試験研究の成果に対する自治体のインセンティブについて

  〇基礎自治体における研究開発型の経済政策について

  〇地方独立行政法人設立の要件緩和について

産学官連携による研究型の産業活性化政策はいずれの自治体にとってもとても魅力的な施策だと思います。これを事実上自治体が設置する地方独立行政法人を通じて実施する道を拡充させるのが今回の改正案の趣旨であると私も理解しており、このような施策がさらに広く広がる可能性に期待するものです。

ただし、地方独立行政法人を介して支出される企業などへの財政支援が地方独立行政法人を抜け道として自治体もしくは首長が関係企業や団体に地方財源を還流させることをどのように防止する仕組みを想定されているのかについて、正しておきたいと存じます。政府参考人のご答弁を願います。

6.教育扶助(学校給食費等)を地方公共団体の長等に対して支払うことを可能に(生活保護法)

   〇自治体事務負担の軽減と生活保護法の趣旨および人権について

   〇公正と平等について

教育扶助費を地方公共団体の長等に対して支払うことを可能にする生活保護法の改正については、生活保護法の精神、制度の趣旨に鑑みて、担当部局のご認識を確認しておきたいと思います。

そもそも生活保護は一時的に憲法が保障する生存権や生活権を補償するための緊急避難的な制度として、可能な限り生活保護から解放されて自立することが制度の目的であると思います。その意味においては、生活保護世帯の子どもの保護者が、生活保護世帯以外の子どもの保護者と同様に、必要な教育費などの支出を行うことが本来あるべき姿であり、給食費を給与天引きするような扶助費の執行に私は違和感を覚えます。

例えば、医療費についても例えば全額免除ではなく、医療費補助を追加してでも受給者本人が医療機関に何某かの医療費負担分を支払う制度に組み替えることで、例えば生活保護受給者自らがジェネリック薬品を積極的に選択するような場面があっていいとさえ私は思います。

今では、主治医がジェネリック薬品でも効果に違いが無いと判断すれば、生活保護受給者は選択の余地なくジェネリック薬品を受け取らなければならないような制度改正が行われたようですが、今一度、生活保護法の精神と施策の趣旨に照らし、なおかつ生活保護世帯が差別されない制度設計をすべきと考えますが、政府参考人のご所見を伺います。

7.町村による都市計画の決定に係る協議における都道府県同意の廃止(都市計画法)について

   〇都市計画道路の計画と接道する国道・県道及び近隣自治体について

   〇都道府県全土の計画との整合性について(市町村は抑制を受けるか)

町村による都市計画の決定に係る協議における都道府県同意の廃止について伺います。この都市計画法の改正によって、町村が市と同様に都市計画決定を独自に行えるようになったと解されますが、現実的にこれまでどのような不利益が町村にはあったのでしょうか。今回の改正によって町村は引き続き都道府県との協議を行うことが確認されていますし、その協議について、都市計画審議会が答申する手続きが明確化されたと理解していますが、実際にこの法改正によってどのような利益やインセンティブが町村にあるのかを伺います。