質疑

障害児者への性暴力について

2019.1115法務委員会より

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山川ゆりこ

それで、きょうはこの後、障害児者への性暴力ということについて質疑をしていきたいんですね。

 というのは、私、率直に申しまして、法務委員になったということで、女性だからということもあるんでしょう、障害児者の性被害、性暴力について、何とかこれを取り上げてほしい、このことがいかに深刻な実態があるかということをお話を伺うことになったんですね。

 正直に申しますと、そのお話を伺って、私も、ここまでひどいのか、ここまでこんな実態なのかということに正直驚いたというのがございます。

 ですので、この問題をぜひ森大臣にも、御存じなのかもしれませんけれども、ここでシェアをして、この問題に積極的に取り組んでいっていただきたいなという思いから、取り上げさせていただきます。

 一つの事例として、これは報道されていましたので、取り上げさせていただきます。少し長くなりますが、その実態というか状況をお伝えするために御紹介いたします。

 知的障害のある二十の女性の、性的虐待を受けたということであります。

 軽度の知的障害がある女性Aさん。

 外出するときはお母さんと手をつなぐような、幼いところがあるという方のようです。

 障害者の就労支援施設に通っていたと。

 そして、お母さんによると、明るくて朗らかで優しい子だった、しかし、あるときから、口数も少なくなって、笑顔もなくなって、そして死にたいと言うようになったそうであります。

 お母さんはその原因がわからないでいたけれども、あるとき発覚したのが、通っていた施設の男性所長によるAさんに対する性暴力であったということのようです。

 二人きりでの調理実習中に後ろから抱きついて体をさわるとか、あるいは送迎の車の中やホテルで服を脱がせる。

 数カ月にわたってわいせつ行為を繰り返していたと。

 母さんによると、口を押さえられたり、痛みを感じて大きな声を出していたみたいであって、抵抗していたと。

 本当にこんなことが起こるなんて、もう信じられないということであります。

 お母さんによると、その加害者である方は、体をさわるということを、Aさんやお母さんに対しては、整体やマッサージというふうに説明をしていた。

 長時間拘束するときは、居場所がわからないように携帯の電源を切らせるなどの入念な、念の入れようだったと。

 そのAさんは、今でも悪夢を見て泣き叫ぶ、加害者に似た男性を見るとパニックを起こすなどのPTSDに苦しみ続けているということであります。

 このことは、その被害を知った自治体が調査を行って、性的虐待があったことを認定し、そして本人も不適切な行為を認めたということであるけれども、しかし、その所長が勤める施設は閉鎖になったものの、罪を問われることはなかった、裁判にならなかったということですね。

 これは、私、報道で見たんですけれども、まず、このケースというかこの報道は、森大臣は御存じでしたでしょうか。

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森国務大臣

森国務大臣 存じ上げております。

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山川ゆりこ

 それはよかったと思うんですけれども、では、森大臣は、これは一例ですけれども、障害があるということで障害児あるいは障害者の方が性暴力の被害者となっているのがどういう実態、どういう数ということで認識をされているでしょうか。

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森国務大臣

 障害を持つ方が性被害に遭いやすい、あるいは被害が潜在化しやすいといった御指摘があることは十分認識しております。

 件数については事務方から答弁させます。

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西山政府参考人

 手元に内閣府男女共同参画局による報告書がございます。

 平成三十年九月のものでございますけれども、この調査で、若年層の性被害者を支援する団体を対象に調査をいたしたところ、三十歳未満のときに被害を受けた性暴力被害百二十七件のうちで何らかの障害ありと見受けられる事例、これが七十件、パーセントで五五%ということであったということでございます。

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山川ゆりこ

 五五%なんですね。これは物すごい数字だというふうに思うわけであります。

 ちょっと時間もないんですが、ほかの数字を挙げておくと、発達障害当事者のフリースペースというところが行った調査で、発達障害、そこにいらっしゃっている方に聞いた、三十二人に聞いたらしいんですが、そのうちやはり二十三人が何らかの性暴力、母数は発達障害のところに通ってきている方ですが、その三十二人に聞いたところ、二十三人が何らかの性暴力を経験していると。

 これは、その性暴力というのは、聞いた項目とすると、望まない人に性的な部分をさわられる、望まない人にキスをされる、望まない人にセックスをされる、望まない人に裸や性器を撮影されるといった、この四項目。これが、二十三人が何らかの性暴力を経験していたということ。

 それから、ちょっと調べてみたんですけれども、WHOがリバプール・ジョン・ムーア大学と共同で、二〇一二年ですか、調査を行ったようですけれども、そこでは、何かメタ調査という形で行っているようでありますが、障害のある児童だと、そうでない児童に比べて、三・七倍暴力に遭う、身体的な虐待を受ける割合は三・六倍だ、そして性的虐待を受ける割合は二・九倍だ、さらに、特に精神障害及び知的障害のある児童が性的虐待を受ける割合は四・六倍だということのようなんですね。

 これは物すごい数字だと思うんですね。

 今、子供の虐待、そして、子供、児童の性的虐待というのがすごく問題になっていますし、大臣もそれにしっかりと取り組んでいくという決意を示していただいたんですけれども、その中でも、本当に、障害のある子供たち、あるいは大人もそうなんですけれども、いかに被害に遭いやすいとか傷つけられやすいか、バルネラブルという言葉を英語では使っているようですけれども、ということが示されているなというふうに思うんですが、大臣は、この数字を聞いてどのように受けとめられるでしょうか。

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森国務大臣

 法務省における実態調査ワーキンググループにおいても、障害者への性暴力に関する啓発活動を行う団体等からヒアリングを行っておりまして、外国の研究結果等も参照しつつ、障害者は被害を訴えることが困難である、そういうふうに加害者も認識をして標的にされやすい、それから、被害者本人が被害を認識できない場合もあるということが指摘をされております。

 また、法務省においては、性犯罪の裁判例に基づいて、被害者が障害を有するかどうかという観点にも着目した分析を行っているところでございます。

 今の委員の御指摘を聞いて、本当に、更に障害をお持ちの方の実態を重く受けとめましたので、今後とも、しっかりと実態を把握していき、着実な検討を進めてまいりたいと思います。

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山川ゆりこ

 ありがとうございます。

 実態を把握していきたいということで、先ほど伺ったワーキンググループの方でヒアリングなどを行っているということは聞いているんですね。

 ですけれども、ちょっと、まだ、議事録の調整があるということで、議事録はアップされていないですし、そこで話されたことも、本当に議事録として実態を文字に起こしていいのかということも含めて調整をされているようでありますので、それほどやはり大変なことだということでありまして、統計的にも、どれだけ障害のある方が被害に遭っているのかということをぜひ明らかにするように、先ほど分析も行っているという話もありましたけれども、新たな調査も含めて、そのやり方というのもいろいろあろうかと思うんですが、ぜひお願いしたいというふうに思います。

 その上で、済みません、時間が本当になくて、幾つか伺っておきたいんですけれども、先ほどありましたけれども、なかなか被害が表にあらわれてこない、あるいは、被害を被害と、何か大変なことが自分の体に起こっているということはわかっても、それが、自分が性暴力の被害者だということを認識することも難しい方もいらっしゃる、しかし、何か大変なことが起こっているということはわかるとか。

 あるいは、被害に遭っているということをなかなか、知的に障害のある方の一つの特徴、特性として、言われたこと、あるいは教えられたことはしっかりと聞かなきゃとか、先生の言うことは守らなきゃとか、なので、自分が嫌なことをされていても、それは言っちゃいけないんだとか、従わなきゃとか、そういうこともある。

 本当に、これを顕在化していくのは大変なことだと思うんです。

 そこで、まずは実態調査が必要なんですけれども、その上で、その実態を把握することはもちろん大事です、それが最も基本なんですが、刑法に障害に乗じた性犯罪という類型を創設するということ、そういったことをやっている国もあるようですけれども、それについて、ちょっと突然で、聞かれても困るということでも困るんですが、ただ、ヒアリングでも明らかになっているはずなんです、ワーキンググループの。

 刑法に障害に乗じた性犯罪を創設するということについて、もしよければ大臣、あるいは事務方でもいいですけれども、お伺いしたいと思います。

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宮崎大臣政務官

 大変重要な御指摘であると思います。

 まず、障害に対する性犯罪について、現行法を見ましても、被害者が障害のために心神喪失又は抗拒不能の状態にあるという場合であれば、百七十八条で準強制性交罪等による処罰が可能であるという現行法上の規律もございます。

 また、障害者に対する性犯罪について、今委員御指摘のような形で暴行、脅迫要件を撤廃するなどの新しい類型を定めるということについては、さまざまな検討を要する事情もあることも事実でございます。

 障害者が被害者である場合に法定刑を重くするというようなことを考えた場合、例えば、その種類や程度がさまざまである障害についてどのような理由で特別な規定を設けるのかということとともに、例えば、処罰するべき範囲であるとか、法定刑を重くするべき範囲を明確かつ限定的に規定できるのか。

 刑法でありますので、罪刑法定主義に基づいて明確性の原則なども求められるところでございますので、こういった点も配慮をしなければいけないという事情もまた他方でございます。

 そこで、御指摘いただいた点も含めて、障害にさまざまな種類や程度があることも留意をして、要件の明確性の点についても十分に検討しなければいけない。

 先ほど、大臣、また事務方からも御説明させていただいておりますとおり、ワーキンググループを設置しておりまして、この中で、障害のある方の性犯罪について、その当事者や支援をされている皆様からもヒアリングをさせていただいておりますし、性犯罪の実態把握や無罪判決などについての収集、分析、また外国法制も十分に検討しているという状況でございますので、これから充実した検討を行うように、大臣の指揮のもと、しっかり検討してまいりたいと思っています。

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山川ゆりこ

ありがとうございます。

 今、百七十八条で、現行でも適用されるということが最初の御説明にあったと思うんですが、じゃ、それが適用された障害児者のケースというのはありますでしょうか。

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小山政府参考人

 申しわけございません。ちょっと手元に準備がございませんので、ちょっとお答え、あとは後ほどでも、可能な範囲で、何かあれば、後でお届けしたいと思います。

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山川ゆりこ

今、持ち合わせがないということで、きのうもこの話、問取りですか、レクでしょうか、でしたんですけれども、準備しておいてとは言わなかったんですが、特に例は、きのうの段階でも挙げていただくことはできなかったんですね。

 先ほど最初にお話ししたケース、Aさんのケースですけれども、この方は二十であったために百七十六条の強制わいせつ、十三歳未満の壁ということで、警察がなぜこれを罪に問われなかったかというと、警察の方が立件できない、二十であったからということで。もしこれに百七十八条が適用されるということが警察側がちゃんとわかっていれば、それは立件できたんじゃないかというふうに思うわけですが、結局、適用されますといっても、実際、そのことをちゃんと法にかかわる方たちが理解をしているのかというのもありますし。やはり、こういうところからして、声を上げてもなお救われないというのは、今度はそれを見て声を上げることをやめるというか、恐れてしまうし、ますます闇の中というんですか、光が当たらないというふうに思うんですね。

 ですから、このことは、本当に私も、御相談を受けて私自身も調べるようになって、こんなにひどいことが、全く本当に卑劣ですね。

 障害を持っているからこのことが明るみに出ないだろうと。

 すごいんですよね。

 相手、加害者は、この障害、この人だったら大丈夫だろうということ、言わないだろう、言えないだろう、自分がされていることを認識しないだろうということを見分けてターゲットにするというふうなことを、相談を受けている支援センターの方々が本当にいかにひどい実態があるかということをおっしゃっていますので、ワーキンググループでのヒアリングは事の始めとして、この問題をぜひ認識していただいて、まだ幾つか質問したい点があったんですが、これは継続してやっていきたいと思いますので、本当にぜひこのことに取り組んでいただきたいということをお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

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