山川ゆりこは、「だれも取り残さない」福祉や「子育て・教育のまち」を掲げ、発達障害児や医療的ケア児の保育、放課後等デイサービスに対する支援の拡充などを訴えています。重度心身障がい児とともに暮らす草加市内のあるお母さんに悩みやご苦労をお聞きしました。
市外の特別支援学校へスクールバス1時間20分
彼女の息子さんは、10代。病気としては数万人に1人、症例としては数十万人に1人という難病です。重度の知的障害と肢体不自由のため、食事、排せつ、お風呂など、生活のほぼすべてで介助が必要です。一人での歩行が困難なため、車いすを利用しています。
お母さんの大きな悩みは、重度心身障がい児のための施設がこれまで草加市内にほとんどなかったことです。肢体不自由の児童を受け入れている最寄りの県立の特別支援学校も市外。スクールバスを利用して通学していますが、いくつものバス停を経由して運行するため、片道1時間20分かかるそうです。
「県の基準では1時間半以内は問題ないとされていますが、せめて1時間以内にしてほしい。最寄りのバス停まで20分かかる人もいます」と話します。
東京都などでは、多くの児童が車いすのまま乗り込めるバスが使われているそうですが、埼玉県は車いすのまま乗り込めるのは4~5人だけのバスが多いそう。そのため、バス乗車時、息子さんを抱きかかえて、車いすからバスの座席に移し替えることが必要です。朝は男性ヘルパーに来てもらえるようになり、
肢体不自由児を受け入れる放課後等デイも草加は少ない
6歳から18歳までの障がい児や発達に特性のある子どもが放課後や長期休暇に利用できる福祉サービスとして、放課後等デイサービスがあります。「放デイ」とも呼ばれ、“障がい児の学童”とも言えるサービスですが、草加市内では、肢体不自由児を受け入れる事業所がほとんどありませんでした。そのため、知的と肢体に障がいのある子どもは、市境を越えて、八潮や越谷、川口、三郷などの市にある事業所に通ったりしていました。
経済的な負担もあります。介護用のおむつに関する支援制度はありますが、「それでまかなえるのは10日分程度。おむつ代だけで月に3~4万は持ち出しになります」と、このお母さんは話してくれました。
心のバリアフリーを育む機会をつくってほしい
市外への通学や放デイとの行き来、経済的な負担もありますが、障がい児を持つ親にとって一番の心配は、子どもの将来です。
「私ができなくなったら、だれが世話をするんだろう、私の代わりはいないと思うと、心に余裕がなくなる」といいます。「寄り添うのは家族ですが、行政からの支えが必要です」。
子どもの将来についても、草加市は厳しい状況が続いていました。学校卒業後に重度心身障がい者を受け入れる施設が、市内には最近までなかったのです。市外の県立の施設も、入居を待つ人が200人という状況が続いています。
けれども、それ以上に深刻なのは、このお母さんが指摘する「心のバリアフリーを育む機会がないこと」かも知れません。
「電車でずっとぶつぶつ話している人は、家への連絡ごとを忘れないように口に出しているのかも知れません。小さいうちからそういう特性のある人と過ごしていたら、大人になってからの見方が違うと思います。そういうことが考えられないと、“なんかこわい”と思ってしまうかも」
草加市立の各小・中学校には、知的・情緒の障がい児のための特別支援学級が設置されています。しかし、肢体不自由の児童の受け入れは限られていました。最近になって、車いす用のスロープを設置するなどとして、受け入れる例も出始めているといいます。
山川ゆりこは、長年、障がい者やその家族の方たちに寄り添い、その声を聞いてきました。特別支援学級と普通学級の交流の拡大も訴えています。市だけでは、課題のすべてを解決することはできませんが、国や県、多くの関係者とも連携しながら、「だれ一人取り残さない」福祉や子育て・教育の実現を図っていきます。